2017年09月23日
Special Tactics Squadron
AFSOC隷下の実働部隊は主に2つに大別されます。1つはMC-130やAC-130、CV-22などの航空機を運用するSpecial Operations Squadron。もう一つがCCTやPJを擁し、地上部隊と共に行動するSpecial Tactics Squadronです。
今回はこのSpecial Tactics Squadronについて書きたいと思います。
Special Tactics Squadron、日本語で特殊戦術中隊と訳されます。略称はSTS。一個のSTSは120~150名ほどで編成されており、指揮官は少佐です。
任務は陸軍や海軍、海兵隊の特殊部隊に帯同(アタッチ)して航空支援や救命処置をすることです。ここで重要なのは「特殊部隊へのアタッチ」だということ。STSはAFSOC隷下の部隊であり、AFSOCはSOCOMの指揮下にあります。なのでSTSは基本的にODAやSEALsなどSOCOM隷下の特殊部隊にしかアタッチしませんし、また特殊部隊についていけるだけの技術と戦術を要求されることになります。じゃあ一般陸軍とかの航空支援は誰がやるのって話になりますが、彼らにはAir Support Oerations Squadronという部隊が派遣されます。それについてはまた別の機会に記事にします。

Fused Response 2014にて7th SFGにアタッチするSTSのPJ。
STSを構成するメンバーは戦闘航空管制官(Combat Control Team,CCT)、特殊戦術士官(Special Tactics Officer,STO)、戦闘捜索救難員(Pararescue Jumper,PJ)、戦闘捜索救難士官(Combat Rescue Officer,CRO)特殊作戦気象観測官(Special Operations Weather Technician,SOWT)です。STOとCROはそれぞれCCTとPJの士官クラスの隊員の呼称です。
なぜ空軍の部隊が派遣されるのか。それは他軍にはない特殊な技術を持っているからです。CCTは爆撃誘導だけでなく、戦闘地域に航空支援に来た航空機の管制や、前線に開設した飛行場での航空管制も行うことができます。またPJは全軍のメディックの中で一番高い医療技術を持ちます。日本では医療行為を誰がどこまでしていいのかは法律で厳格に決められていますが、それはアメリカでも同じです。同様にアメリカ軍内でも軍医以外の医療行為には規定があります。その中でもPJはODAや海軍のメディックより高度な医療行為をすることができる存在です。このように空軍にしかできない技術を他の特殊部隊に提供するのがSTSの役割なのです。
次に組織の話に移ります。フロリダ州ハルバートフィールドに拠点を置くAFSOCはその下に多数の航空団(Special Operarions Wing)を持ちますが、その中でも24th Special Operations Wingは多数のSTSを抱える航空団です。

24th SOWもハルバートフィールドに所在します。その下に2つのグループ、720th Special Tactics Groupと724th Special Tactics Groupがあります。

720th STGはこれも同じくハルバートフィールドに所在し、以下の5個のSTSを指揮下に置きます。

本部:ジョージア州フォートベニング
2013年に前身であった17th Air Support Operations Squadronを改編して設立された部隊です。設立経緯が特殊なため17th STSにはCCTやPJがいなく、戦術航空統制班(Tactical Air Control Party,TACP)と航空連絡士官(Air Liaison Officer,ALO)、そしてSOWTで構成されています。
同じフォートベニングに本部を置く陸軍の第75レンジャー連隊に専属でアタッチする部隊です。というかSTSの中でも17thは異色すぎるのでまた別の記事で書きます。

2014年10月にカンザス州サライナで演習に参加する17th STS。

21st Special Tactics Squadron
本部:ノースカロライナ州ポープフィールド
ポープフィールドは陸軍のフォートブラッグに隣接する飛行場です。フォートブラッグには陸軍特殊作戦コマンド司令部と3rd SFGがいるので21st STSは3rd SFGへのアタッチが多いのではないでしょうか。

2015年4月にハルバートフィールドで行われたEmerald Warriorに参加する21st STS。

22nd Special Tactics Squadron
本部:ワシントン州ジョイントベース・ルイスマコード
アメリカ国内にいるSTSで唯一西海岸に本部を置く部隊です。
ジョイントベース・ルイスマコードは陸軍のフォートルイスと空軍のマコード空軍基地が合併してできた統合基地で、ここには1st SFGがいます。

2017年3月にエグリン空軍基地で行われたEmerald Warriorに参加する22nd STS。

23rd Special Tactics Squadron
本部;フロリダ州ハルバートフィールド
空軍特殊のメッカに所在するのは23rd STS。最近露出が多い部隊です。AFSOCのお膝元にいるせいかAFSOCにいいように使われている気がします。すぐ隣のエグリン空軍基地には7th SFGがいます。

2016年5月に当時のカーター国防長官がAFSOCを訪れた際に訓練展示を行う23rd STS。

26th Special Tactics Squadron
本部:ニューメキシコ州キャノン空軍基地
2014年に編成された一番新しいSTSです。もともとヨーロッパで7026th Special Activities Squadronとして活動していましたが、1992年に不活性化されました。
しかし昨今の統合作戦の増加及び特殊作戦部隊の需要の多さに応えて2014年に再活性化しました。
2014年4月にキャノン空軍基地で行われた再編成を記念する式典で部隊旗を手渡される26th STS。

724th Special Tacitcs Groupです。24th SOWの隷下にいますが、本部はノースカロライナ州ポープフィールドにあります。724th STGの指揮下には1個のSTSがいます。それが24th Special Tactics Squadronです。

24th Special Tactics Squadron
本部:ノースカロライナ州ポープフィールド
21st STSと同じくポープフィールドに本部を置いていますが、24th STSは他のSTSとは並列には語れません。
ポープフィールドに隣接するフォートブラックは陸軍特殊作戦コマンドの司令部があると同時に、統合特殊作戦コマンドの司令部があります。デルタとかDEVGRUが所属しているところですね。
そして24th STSもJSOCの指揮を受けます。つまりデルタ、DEVGRUにアタッチするガチモンの空軍特殊です。JSOCが実施するハイバリューターゲットの殺害や確保など、秘匿性、重要性が非常に高い作戦に空軍の能力を提供するのが彼らの任務です。
古くは1993年のモガディシュの戦闘に参加しており、2011年のビンラディン殺害作戦の際にもDEVGRUに負傷者が出ることを想定して上空で待機していたと言われています。また悲しいことに2011年8月にアフガニスタンでチヌークが撃墜された際、同乗していたDEVGRUやアフガン兵と共に24th STSも3名の隊員を失っています。
(2018年8月4日追記)ありました。なんかWikipediaに上がっていたのを辿ったらありました。

2014年4月にホロマン空軍基地で行われたAdvanced Guardに参加する24th STSの隊員。GPNVGみたいなの見えるんですけど気のせいですか。あとロープ降下している隊員が持っているの416じゃないだろうな…?

352nd Special Operations WingはAFSOC隷下の航空団の一つです。イギリスのミルデンホール空軍基地に所在しています。
AFSOCの指揮下にあると同時にアメリカ欧州軍、欧州特殊作戦軍(SOCEUR)の指揮下にもあります。この352d SOWはMC-130やCV-22を運用する飛行隊とともに1個のSTSを隷下に置いています。

321st Special Tactics Squadron
本部:イギリス、サフォーク州ミルデンホール空軍基地
海外に駐留する2個のSTSのうちの1個です。最近ロシア関係でヨーロッパがきな臭いので露出が多くなっています。
ドイツに10th SFGの第一大隊が、それ以外にも欧州諸国の特殊部隊と共同で訓練していたりします。

2017年8月にエストニアで道路にA-10を着陸させる321st STS。(ちなみにこの訓練でA-10が道路標識折ってしまったそうです…。)

353rd Special Operations Groupは沖縄県嘉手納基地に本部を置く特殊作戦群です。こちらもAFSOCと同時にアメリカ太平洋軍、太平洋特殊作戦軍(SOCPAC)の指揮も受けます。ここも同様に1個のSTSを保有しています。

320th Special Tactics Squadron
本部:日本、沖縄県嘉手納基地
日本に所在するSTSです。この前の横田フレンドシップデーでも話題になりましたね。
同じく沖縄県には1st SFGの第一大隊が駐留しています。またオーストラリアなど太平洋軍の管轄内で行われる演習にも参加しているのが確認されています。

2017年3月に沖縄で海兵隊ANGLICOと共に訓練を行う320th STS。
以下2つのSTSは空軍州兵、ナショナルガードのSTSです。

123rd Special Tactics Squadron
本部:ケンタッキー州ルイビル国際空港

2017年3月にオクラホマ州フォートシルで訓練を行う123rd STS。

125th Special Tactics Squadron
本部;オレゴン州ポートランド国際空港

2017年4月にポートランド空港でMH-60と共に訓練を行う125th STS。
以上です。STSは部隊数こそ多くありませんが、彼らこそが空軍の特殊作戦能力の一翼を成す重要な戦力です。STSはすごいんだぞ、っていうのが分かっていただければ幸いです。
それにしても空軍の部隊エンブレムってカッコイイですよね。
Posted by POPE at 18:56│Comments(0)
│部隊解説